着付け教室に関するトラブルで多いのが、無料の着付け教室による執拗なセミナー販売です。セミナーと称して着物や帯の問屋など、多くの販売業者が待ち受けている会場へ連れていかれ、店員や講師、教室の担当者に囲まれたり、長い時間勧誘されたりして、断りきれずに着物や帯を買わされてしまう、といったトラブルです。
このように、無料とうたって結局何かを買わせる商法は「無料商法」と呼ばれ、国民生活センターにも「強引に帯を買わされた無料の着物着付け教室」の相談事例が寄せられています。
展示会場や販売会場まで巧みに消費者を誘い込んで販売する手法は、絵画や宝石、健康器具などの高額商品の販売にも使われており、消費者の意に反してクレジットやローンで高額な契約させることが問題となっています。なかなか契約しない相手には、複数の担当者で囲むようにして契約を勧めるなど、断りづらい状況を作り出して強引に販売するケースもあります。
着付け教室に入学した方の場合は、着付けを習いに来た初心者、つまり着物に関する知識がほとんどない素人同然の状態なわけですから、複数の販売員に囲まれてしまえば、もはやなす術はありません。いろいろな着物や帯を合わせられて体に着装されると、自分で解くのも難しく、簡単にはその場を離れられなくなる可能性もあります。
必要がないからとキッパリ断れればよいのですが、今まで無料で着付けを教わってきているので、断ってしまうことに心理的な負い目を感じて断れない方も多いのではないでしょうか。買いたくないと思っていても、結局はその場の雰囲気に押されてしまい、しぶしぶ契約してしまい、トラブルとなるケースは数多くあります。
まず、着物や帯についての知識がないために、販売員に「お似合いですよ」と言われても、自分では分からないので、単なるセールストークなのか、本当に似合っているかの判断がつきません。
商品の価格についても判断する知識がないため、「お買い得です」とか「着物と帯をセットでご購入いただければ割引させていただきます」と言われれば、どんなに高額な商品であっても「安い」と思いこまされる危険性もあります。着物と帯のセット割引はセミナー販売ではよくある手法ですが、大きな割引率を提示されるとつい買ってしまう方も多いようです。
また、問屋から直接購入できるから特別に安く提供できるというセールストークもありますが、着付けを習い始めたばかりの初心者にとっては、その商品が本当にお買い得かどうかは全く分かりません。
問屋から直接購入というかたちをとっていたとしても、実際には無料で指導した講師の人件費、着付け教室や販売会場の家賃など、無料で着付け教室を開催した会社へのマージンが発生すると考えるのが自然ですので、問屋だから安いという理屈は必ずしも当てはまりません。
むしろ、そのような経費を考えれば、通常の小売店よりも高い価格がついている商品があったとしてもおかしくはありません。
「タダより高いものはない」とはよく言ったものですが、無料の着付け教室の中にはこのような販売勧誘に関するトラブル事例が多発しているところもあるようです。
このような押し売りが起こる原因や対策については「着付け教室での押し売りがなくならない理由」に詳しい説明が書かれていますので、ぜひご参考になさってみてください。
会場で着物や帯を買わなかったら、後日教室で嫌な思いをしたという相談もあります。無料のうたい文句にはくれぐれもご注意ください。
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